眠れない一族 ダニエル・T・マックス

書店で手に取ったとき、副題の「食人の痕跡と殺人タンパクの謎」をみてプリオンの話だと分かった。でもタイトル、そして装丁に使われているロンギによるヴェネツィアの絵が結びつかなかった。


致死性家族性不眠症に苦しむ一族からはじまり、クールー病スクレイピー狂牛病、CJDなどの病気の歴史とその謎が解き明かされていく様を活写するドキュメンタリー。全く別の場所、全く別の動物、全く異なるかかり方をするいくつかの病気が、推理小説を解くかのようにプリオンで説明されていく様を追体験できる。その過程では二人の科学者、それも得意なキャラクターの二人が中心的な役割を果たしており、プリオン病の解析も科学的記述にとどまらない生き生きとした物語。また、著者自身も治療法の見つかっていない別の病気を患っており、冷静な筆致の向こう側からある種の諦念が伝わってくる所がまた独特の読後感を与える。各章に引用文献や注釈もついている。


非常に面白い本で、夢中で読んでしまった。

眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎