科学

地磁気を感じ取る牛

PNASに出た論文によると、Sabine Begallらはグーグルアースを使って牛などの草を食む動物がどんな向きで居るかを調べたそうだ。そうすると、南北方向にたたずんでいる牛や鹿が優位に多かったという。そういわれてみれば、牛ってみんな同じ方向いてもぐもぐや…

プリオン説はほんとうか? 福岡伸一

前半はプルシナーが中心となって解明した、プリオン蛋白質がBSEなど一連の病気の要因であるとする研究の紹介。後半は、一転プルシナーのプリオン蛋白質単独原因説に疑問をはさみ、自説を展開するという本。 大変面白く書けているのだが、それ以上に疑問が多…

見てわかるDNAのしくみ(工藤 光子, 中村 桂子)

JT生命誌研究館は基礎研究の現場と一般の人をつなごうとすばらしい努力を重ねてきた。その成果の一つがこの三枚組DVDだ。今の日本はすぐに社会に還元される研究を求める。平たくいえば、金儲けになる研究だ。だがそれで本当に日本の科学は豊かになるのだろう…

眠れない一族 ダニエル・T・マックス

書店で手に取ったとき、副題の「食人の痕跡と殺人タンパクの謎」をみてプリオンの話だと分かった。でもタイトル、そして装丁に使われているロンギによるヴェネツィアの絵が結びつかなかった。 致死性家族性不眠症に苦しむ一族からはじまり、クールー病、スク…

魚の左利き右利き

この正月は北海道の美味しいシシャモを送ってもらって食した。開封すると雌雄両方入っていて、雄の方が普通スーパーで売ってるぐらいの大きさ。子持ちのメスはそれよりも一回り小振り。雄のシシャモを食べた記憶がないのだが、これが美味しくてびっくりした…

系統樹思考の世界 三中信宏

これはなかなかの良書であった。いまや生物関連の論文や学会発表で現れないことはないといっていいほど広まった系統解析。いったいこれがどのような考え方に基づくのか、歴史的経緯も含めてきわめて平易に解説してある。専門的な知識がなくても十分理解でき…

日本人になった祖先たち 篠田謙一

ミトコンドリアDNAの配列解析から、人類がどのように世界へ拡散していったか考察する内容。といっても、表題の通り日本人のミトコンドリアDNAに関する話題がおおい。新しいデータも色々入っていて、人類がアフリカをでてどのようなルートをたどって世界中へ…

スーパーコンピューターを20万円で創る 伊藤智義

大学院生が特殊計算に特化したスーパーコンピューターを自力で、しかも20万円で作ってしまった話。コンピューターを作った経験などなかった人がだ。もちろんすべて独力という訳ではなくて、教授を筆頭とする天文学の研究室のメンバー数名と外部の協力者の…

「退化」の進化学 犬塚則久

副題には「人に残る進化の足跡」とある。人が進化する過程で失っていった、あるいは失いつつある器官に注目して、他の生物におけるその「祖先」器官と比較している。耳や心臓、歯など俎上にあげられた器官は様々で、その進化的起源を俯瞰していくのはとって…

125 QUESTIONS 我々は何を分かっていないのか?

もう二年以上前になるが、2005年の6月にサイエンス誌は125周年を向かえ、記念号にて、現在の科学にとっての大きな謎、課題はなにかリストアップしようという企画があった。今後25年のうちに解かれるか、手がかりが得られそうなものに限る、という条件付きで…

水鳥の生殖 余話

美味しんぼの原作者、雁屋哲のエッセイを読んでいたら、養鶏場で生まれたヒヨコは性別の選別を受けるというくだりがあった。 あれ?どうやって判別するんだと思って調べてみると、羽毛の生え方あるいは総排出腔をすこし開いて雄と雌の微妙な違いを判定するそ…

水鳥の生殖器 その後

鳥類の祖先は恐竜のそれとつながる。となると、恐竜はどのように生殖していたのだろうか、と気になって少し調べてみた。予想された事だが、やはり良く分からないらしい。化石でわかる恐竜の形態には限界があるし、ましてや生殖の実際などは想像を逞しくする…

水鳥の生殖器(2)

これまで調べられた鳥類の雄では、わずか3%しかファラス(phallus、ここでは通常内部に格納されており、性交時に外部に出てくる雄鳥の性器をさす)を持っていません。また、これまで知られていたファラスは、非常に単純な構造のものしか知られていませんで…

水鳥の生殖器(1)

鳥の交尾を見た事がありますか?雄が雌の腰にのしかかり、アレッ?という間に終わっていますね。鳥類は殆どの物が外性器を持たず、総排出腔同士を押し付ける事で交尾が成立するそうです。ところが、例外もいる。 ここに上げた写真は、南米の水鳥、Argentine …

沈黙の世界

ジャック=イヴ・クストーの映画「沈黙の世界」を見た。フランスで海といえばジャック・マイヨールとこの人をまず思い浮かべる。クストーはアクアラングを開発した一人でもあるそうだ。 この映画は1956年公開作品で、カリプソ号に乗って地中海、紅海、インド…