魚の左利き右利き

柿田商店の柳葉魚

この正月は北海道の美味しいシシャモを送ってもらって食した。開封すると雌雄両方入っていて、雄の方が普通スーパーで売ってるぐらいの大きさ。子持ちのメスはそれよりも一回り小振り。雄のシシャモを食べた記憶がないのだが、これが美味しくてびっくりした。酒の肴には断然雄の方が良い。


そのししゃも、みんな同じ方向に曲がっているのを眺めていて、思い出した。魚にも左利き右利きがあるのだ。初めてその話を聞いたのは他の魚を襲ってはがれた鱗を食べるシクリッドという魚。魚の体全体が左か右に湾曲していて口の開いている方向が異なり、食われる方と食う方とで左利き右利きの関係が決まっているそうだ。魚の左利き右利き右利きは、シクリッド以外にもある事が分かってきて、遺伝する形質だという。


焼いたり干したりして魚が曲がる、その方向も左利き右利きに依存しているそうだ。
以下のサイトの解説が分かりやすく面白いです。
http://miffy.main.jp/laterality/aquanet.htm
http://miffy.main.jp/laterality/laterality.htm

系統樹思考の世界 三中信宏

これはなかなかの良書であった。いまや生物関連の論文や学会発表で現れないことはないといっていいほど広まった系統解析。いったいこれがどのような考え方に基づくのか、歴史的経緯も含めてきわめて平易に解説してある。専門的な知識がなくても十分理解できる書き方であって、しかし中身は一番重要なところが分かる。話題も生物に限らないし、巻末の参考文献リストという名の読書案内や索引もついておりおすすめの一冊。

系統樹思考の世界 (講談社現代新書)

系統樹思考の世界 (講談社現代新書)

日本人になった祖先たち 篠田謙一

ミトコンドリアDNAの配列解析から、人類がどのように世界へ拡散していったか考察する内容。といっても、表題の通り日本人のミトコンドリアDNAに関する話題がおおい。新しいデータも色々入っていて、人類がアフリカをでてどのようなルートをたどって世界中へ拡散していったか大筋を理解できる。

ただし、話題がミトコンドリアDNAの解析にほぼ限られてしまっていているのがとても残念だ。文化、言語、地理、気候などなど、人類の歴史をさかのぼろうと思ったら、ほかにも色々俎上にあげた方がいい話題はつきないだろう。ミトコンドリアDNAのハプロタイプを事細かにかなりの紙面を割いて解説している割に、そもそもミトコンドリアDNAの構造がどのようなものか、ハプロタイプの違いがどの部分のどういった配列の違いなのかなど基本的なことには触れられていない。そういったバランスの悪さと、語りの不器用さで少々読みづらく感じたが、内容自体はとても面白かった。エッセンスだけなら今うっているThe Big Issue 86号を買うとよい。

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)

めじろ

今日仕事場にいったら、すっかり葉の落ちた木々に、たくさんのメジロが群れていた。これが目白押しか。メジロというと梅の花の蜜を吸っている姿が思い浮かぶけれど、木の実か肌をついばんでいるようだった。
美しいうぐいす色の丸々した体に真っ白な目、とてもきれいだった。

ホームラン術 鷲田康

ベーブ・ルースから松井まで、日米のホームラン打者のホームラン術を概観した書。個々の打者の技術の違いだけでなく、日米事情の違いに着目し、松井がメジャーに移って打撃法を改造せざるを得なくなったことをこれに重ね合わせる。ユーチューブなどで文章を補い読むとよい。なかなか面白かった。

ホームラン術 (文春新書)

ホームラン術 (文春新書)

スーパーコンピューターを20万円で創る 伊藤智義

大学院生が特殊計算に特化したスーパーコンピューターを自力で、しかも20万円で作ってしまった話。コンピューターを作った経験などなかった人がだ。もちろんすべて独力という訳ではなくて、教授を筆頭とする天文学の研究室のメンバー数名と外部の協力者の共同作業。その過程が臨場感あふれる筆致で、活き活きと描かれている。


スーパーコンピューターを作り上げてしまった件の院生は勿論すごいのだが、天文学の研究室がその研究目的のためにコンピューターを自作しようと考え、実行に移すところが一番すごいと思った。自分がやってる分子生物学の世界は、もう何でも買って済ませる世界なので余計にそう思う。実験装置を買ってすませるということは、逆に買えるもので研究の内容が規定されてしまうということで、これは恐ろしいことだなと自戒。


ところで、この本の著者が実は、スーパーコンピューターを作り上げた本人なのだ。この本は自分をも客体化して書いたドキュメンタリーという体裁になっているのだが、端々に著者の自負も垣間見えたりして、そこがまた自伝ともドキュメンタリーとも違った面白さを付加していた。

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)